北尾吉孝日経新聞によると、ソフトバンク・インベストメントの北尾CEOが、1月29日パレスホテルで、約300人の幹部に対し、「最後に生き残るのは『リアル』を活用したネット証券だ」と経営方針を力説したところ、その場にいた幹部社員たちがどよめいたそうだ。
仮想と実在、商戦も融合
 「最後に生き残るのは『リアル』を活用したネット証券だ」
 一月二十九日、パレスホテル。インターネットの総合金融グループ、ソフトバンク・インベストメント(SBI)最高経営責任者の北尾吉孝(54)は約三百人の幹部を前に経営方針を力説した。その場にいた幹部社員たちはどよめいた。北尾の言う「リアル」とは営業マンによる伝統的な証券営業。SBIはネット証券最大手のイー・トレード証券を傘下に置き、ネット取引という人手を介さない「バーチャル」(仮想)方式の金融戦略を進めてきたからだ。

■拡大に限界
 北尾は布石を打っていた。経営方針を発表する一週間前、ベテラン営業マンを九人抱えるフィデス証券(旧日商岩井証券)の買収を決めた。新規公開に伴う株式や不動産ファンドを二月中にも地方銀行などに販売する計画だ。
 「手数料の値下げだけでは拡大路線にも限界がある」。これまでイー・トレードは「業界で最も安い手数料」を看板に、個人から株式売買の注文をネットで集めてきた。委託売買のシェアはSBI全体で八・三%と、八・八%の野村証券に肉薄、首位も見えてきた。野村を抜いた後の目標として、対面とネットを併せ持つ証券会社を目指すことにした。
 日本でネット証券が登場して六年。個人の株式売買高に占めるネット経由の割合は八割を超え、「市場はこれ以上広がらない」との見方もある。大手証券が得意とする対面営業に攻め入らない限り、成長はおぼつかないというわけだ。

約300人の幹部社員たちは、今まで、バーチャルで高成長を遂げてきたのに対し、リアルという逆の戦略を力説されたので、どよめいたようだ。本当に驚くほどのことだったのだろうか・・・

イー・トレード証券に限らず、ネット証券各社はリアル金融との提携を強めている。
 松井証券は、りそな銀行や地銀・信金、
 マネックス・ビーンズは、みずほFG、
 楽天証券は、新生銀行(ただしネットでの提携のようだが・・)
 カブドットコム証券は、UFJ銀行
という感じだ。
しかし、イー・トレード証券は親会社のSBIが直接リアル証券会社を支配している点でより積極的だ。既にワールド日栄フロンティア証券、フィデス証券、エース証券の3社を持っている。

先日のイー・トレード証券の決算説明会で、北尾会長はワールド日栄の投信の販売力は旧野村系証券で断トツだった、と述べている。

一昔前は、「ネット専業が先行しても、いずれ大手の有店舗証券がネットに参入したらひとたまりも無い」という、『バーチャル』を利用した有店舗証券が市場を席巻するという考え方があったが、結果は、ネット専業の圧勝となった。次の段階は、ネット専業のままがいいのか、『リアル』を活用したネット証券の方がいいのか、あるいは中間がいいのかというところに各社の戦略の違いが出てきそうだ。

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