大阪証券取引所のシステムが取引の急増に耐えられなくなって、IPOの抑制や信用取引の規制というその場しのぎの対応方針を発表し、投資家から非難を浴びている。8日に大証が開いた投資家向け説明会に筆頭株主の村上ファンドを率いる村上世彰氏が出席し、システム障害について経営陣の責任を追及した。経営陣は、システム増強の努力はしていたが予想を上回る取引の急増だったとして、責任逃れをして入る感があるが、上場以前のシステム投資の判断が違ったものだったら、これを防げた可能性もある。

大証の大株主村上氏は大証に対して以下のような批判を行っている。
 1 上場凍結発表前に証券会社を通じて情報漏れがあったのではないか
 2 システム投資や決済事故への備えに内部留保ではなく銀行借り入れで対応するべき
 3 システム投資を怠ってきたためではないか

大証側は以前から、質問状を受けていたため、2に関しては「そもそも取引所には担保がなく、借り入れは難しい」と反論しているが、内部留保については「単に大証だけの問題とせずに、オール日本として議論してもらいたい」と経営責任を回避するような発言もしている。


■ システム投資のための資金調達元は?

現在大証は清算システムと売買システムという2つのシステムを入れ替えているところだ。ヘラクレス上場直前の目論見書によると毎期20億円前後(直近の決算説明資料では30億円規模に増加)投資の見込みで、当時の現金残高が210億円あるため外部からの資金調達ができなくても自己資金の範囲で行えるとのことだった。システム投資に関しては、「上場しなくても今もっている現金でできるんだ」と言っているようなものだ。

ただし実際にはシステム投資には、上場による調達資金が投入されている。確かに上場時の調達資金の用途はシステム投資だった。



■ 新売買システム構築の遅れ

大証のシステム投資は、上場時の目論見書によると

新清算システム 2004年9月
新売買システム 2005年7月

だったが、実際には以下のように数ヶ月以上遅れている。

新清算システム 2005年2月
新売買システム 2006年1〜2月予定


ちなみに、大証がデリバティブ取引に関して、日本証券クリアリング機構(日本の証券統一清算機関)と提携する道を選んでいれば、新清算システムへの投資は必要なかったのではないのか、という話もある。大証には、主力商品「日経225先物・オプション」がある自負から、あえてクリアリング機構へは不参加にしたのかもしれないが、独自に構築するにしても、それより新売買システム構築を優先した方がよかったのかもしれない。