北尾吉孝会長23日、イー・トレード証券の株主総会終了後の経営近況報告会で挨拶した、会長の北尾吉孝氏(SBI CEO)は、ネット証券業界は第2フェーズの競争に入ったとして、ネットとリアルをうまく融合させることによって、イー・トレード証券とSBIグループを、必ず日本の証券業界の雄にすると述べた。

23日、イー・トレード証券の株主総会後の経営近況報告会冒頭
株主を前に挨拶をする北尾会長(左)、(右)は井土社長。

北尾でございます。本日は私どもの63期株主総会にご出席を賜り、ご審議を頂きまして、まことにありがとうございました。せっかくの機会ですので、私から一言、今の証券業界、イー・トレードの戦略を簡単にお話したいと思います。

私どもがイー・トレードを始めて、その他のところもネット証券会社を開始して、だいたいネットの証券界の勝ち負けが決まってきたかなという感じでございます。もちろん私どもがその勝者の筆頭にあがっていると言う方が非常に多くなってきています。最近のマスメディア、その他を見ていただいても、だいたい私どもがネットの証券界では1番になってきたと。ご承知のように、口座数、預り資産、そしてシェア、この三冠王に、しかもかなり2位以下と差を開けながら三冠王に輝いているということです。この間、熾烈な競争をしてきたわけですけども、その競争した結果として、ネットの口座数は、今年の3月末で、694万口座になったと。インターネット人口は、日本全体で7948万と言われていますから、1割にまだ到達しませんけども、1割に迫るような方がネットの証券口座をお持ちになっている、こういう状況であります。委託売買代金のシェアは、ネットの証券会社大手を足しますと、6割ぐらいになってきております。この間の競争はこの数字にも表れていますように、ひとつはネットとリアル、ネットの証券会社とリアルの証券会社の領地の奪い合いであったということであります。もうひとつはネットとネットの競争であった。この2つの熾烈な競争の中で、ネットの方が、ネットとリアルの面で見れば、領地を大きく奪ったと、大手だけを見てみても大体6割ぐらいが、ネットの証券会社で占められているということであります。証券業協に登録している証券会社数は、だいたい270社、そのうち40社が、海外勢でありますから、230社のネットの証券会社とリアルの証券会社、このトータルの数が大幅に減ってくる競争には言ってくるんだろうなというふうに考えています。

また、ネットの証券会社での競争、いよいよ第2フェーズの競争に入る。この第2フェーズの競争がどういうものかと申しますと、私がイー・トレード証券を日本で作った時、アメリカではだいたい90のネットの証券会社があったわけですけども、ずーっと整理されて今だいたいメジャーなものは3社。それは、私どもがパートナーにしている、イー・トレード・ファイナンシャルズ、アメリトレード・ホールディングス、カナダのネットの会社でありますTDウォーターハウス、だいたいこの3社が、生き残ったということであります。それに加えて、ディスカウントブローカーという形で出発した、チャールズ・シュワブがかなりの顧客数を持っていると。これはネットほどは安くないけれども、リアルのいい面、いわゆるファイナンシャルアドバイザーを使って、そしてお客様とFaceToFaceで話をさして商売につなげているというやり方をとっているところでありますけれども、ここがかなりの力を持っている。で今この残っているアメリカのネット(証券)の中で、いよいよ買収合戦が起こっている。すなわち、イー・トレード・ファイナンシャルズが、アメリトレードを買いに行こうと買収提案を出しました。そしたらアメリトレード側は、TDウォーターハウスと一緒になって、それ以上の条件でないとイー・トレードに売らないよ、という感じになり、イー・トレード側はまた次なる買収提案をする、大幅に譲歩するような、まぁそういうことがアメリカで起こっているわけであります。私は、それと同じような事が、すなわち残るのは1社か2社だけ、ということが日本のネットの証券界でも起こってくるだろうなというふうに洞察しているわけであります。

そして、リアルの証券会社が、ますます難しい局面に入ってくるだろうなと。私共も、ご承知のようにワールド日栄、あるいはエース証券といった会社を野村證券から買収をいたしました。「何で買収をしたんだ。リアルはネットにやられるんだろ。」こういうふうに、その時からよく言われて、今でもご指摘になられる方もおられますけれども、私はネットとリアルをうまく融合させることが、絶対に勝つ必勝方法なんだと申し上げているわけであります。例えば、イー・トレードのお客さんを見ると、20代30代でだいたい5割を占めています。ところがワールド日栄やエースのお客さんは60代以上でだいたい5割を占めています。年齢世代の壁というのはどうしてもあるわけであります。私どものように顧客中心主義を貫いている会社の場合は、この両方の融合戦略をやる事によって初めてあらゆる年齢の方々にあらゆる商品、あらゆる証券サービスを提供できるということになるわけであります。したがって、この融合ということを、このセカンドフェイズでの競争で前面に出しながら、戦って行く事になろうかと思います。

ネットの中ででは、ますます手数料が大事になります。この手数料の引き下げについては、真剣に考えないといけないフェーズに入っている。そしてなお大きく口座数、預り資産、売買代金のシェアで差をつけていく、そしてもう生き残れないところまで、差をつけていく、こういう形ですね。まさにアメリカで起こったことです。そして、その後で、アメリカでは買収するということが起こったわけです。私どもも同じような戦略をとって行くという事になろうかと思います。そして、アメリカではあまりやられてない、リアルとネットの融合という形も私どもが掲げる第2フェーズの競争の重要な戦略であります。いずれにしても競争に勝つためには、一番大事な事は、戦略。戦略で負けたところは必ずやられていくんです。したがって私はその一手に間違わないように、歴史を、アメリカで何が起こったんだ、どういうふうになっていったんだ、もちろん日本の特殊性も考慮しながら、日本ではこうなっていくだろう、その戦略をいろんな形で考えております。

この第2フェーズの競争が終わった時、イー・トレードがネットの証券会社の一つの雄という状況でなく、日本の証券界における雄に必ずなる。私ども幸いながら、SBIグループという企業生態系、これが全ての企業が順調に伸びて行っていますから、グループのそれぞれの会社と、さまざまなシナジー、相乗効果を醸しながら、独自の戦略を次々と打ち立てる事によって、必ずやイー・トレード証券を、証券界の雄に羽ばたけるようになると確信をいたしております。それが終わったら、次は雄の中の雄になって、私どもの悲願でありますこれを何とか達成したい、それをまた達成するのは戦略と資金であります。資金力を大いにつけていく、グループ全部をあげて資金力をつけていく、イー・トレードのみならず。そしてこの悲願を最終的には達成していく。そして、ここにおられる株主さん、その時まで株主さんでおられたら、大きな果実を皆さん方、得ていただきたい、というふうに心から思うわけであります。引き続き、皆様方のご支援をお願いをいたしまして、私の挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。


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