野村證券グループの9月30日の部店長会議後の記者会見で尾崎哲執行役が、野村ホールディングスの子会社としてネット専業の証券会社を来年春に設立することを明らかにした。野村證券とは別の会社として設立し、有店舗証券ではつかみにくい若年層にターゲットとするようだ。気になる手数料についての具体的な話はないが、先行するネット証券並みにする可能性がある。

野村証券グループのホームページに、9月30日の部店長会議についての資料が公開されている。(PDF)

漠然としたことしか書いてなかったが、来年の春を目処にネット専業証券を設立し、もしかしたらネット銀行の機能も付けるかもしれないということらしい。

野村證券は以前、野村ファンドネット証券というネット専業の投資信託を専門に扱う子会社を設立したものの失敗して撤退するはめになったが、今回のネット専業証券設立は、本気でネット証券大手と戦える会社を作るつもりのようだ。

さて、うまくいくだろうか。

・野村證券のブランドを使わないで、全く独立して営業をする。
・既存のネット専業証券より低くするか明言は避けたものの、「当然そんなには取れない」(尾崎執行役)
・人事や新会社名など詳細に関しては、野村総合研究所の執行役員だった福井正樹氏をホールディングスの顧問として迎え入れ、詰めて行く。
・ネット証券設立とは別に以前からの方針通り、野村ホームトレードの機能は刷新


まだ新会社の戦略の詳細はまだ具体性にかける。野村のブランドをはずすというのは前向きなことのように見えるけど、野村ネット証券にすると、野村證券本体との手数料の差が目だってしまい、有店舗の客が流れてしまうことを気にしたからかもしれない。

新会社としては、まず開業から10万口座獲得ぐらいまでは赤字覚悟でやらないとダメだろう。すでに大和證券が手数料値下げしても大きな成果を得ていない状況からすると野村のネット証券は、ネット専業証券大手並みに機能をそろえないければいけないということぐらいはわかっているはずだ。具体的には、口座管理手数料無料、入出金手数料無料、都銀からの即時入金、無期限信用、リアルタイム株価更新ツール、モバイルサービス、公平なIPOなど。これらに注力すべきだが、今回の発表や報道を見ると新会社がネットで銀行業に参入することも視野にしているとしている。あまり銀行の機能にこだわりすぎて人材やシステム投資を割きすぎると、ネット証券大手には勝てなくなるかもしれない。やはりネット証券の主力のサービスの分野で攻めなくては。まず、有店舗のIPOの割り当てをネットに回すことが先決だろう。今のところ野村自慢のIPOのシェアをネットに大量に回すことしか勝つ手段は考えつかない。

どうなるにせよ、ネット証券として新規参入してくれるのは、ネット証券Blogとしては歓迎すべきことで、ネット証券大手各社の関係者も、とりあえず「むしろ歓迎、望むところ、そんなに簡単にはいかない」などとコメントするんだろう。たぶん。