楽天、三木谷社長、国重副社長楽天がTBSの株式を取得した件についての、記者会見で三木谷社長と一緒に出席した国重副社長は、「株式市場の絡みもあり、事前に言うわけにはいかない」と質問に答えていたが、国重氏はDLJ時代に東証に手口情報の完全公開を要求していた急先鋒の人物。法的には全く問題ないし、今回の問題は個人投資家が直接損をするものではなかったものの、リテール業務だけでなく投資銀行業務も手がけるようになった楽天証券は、以前の主張とはやや矛盾する事業をしなくてはならなくなってきているのかもしれない。

ITmediaニュース:楽天、TBS筆頭株主に 経営統合を提案 

三木谷社長によると、テレビ局と経営統合するアイデア自体は「去年の8月ごろ」に思いついたという。これまで楽天はTBS側と業務提携について提案したきたが、「ホップステップジャンプするには資本提携が必要と判断した。真剣に考えていることを証明したい」(三木谷社長)として株式取得に踏み切った。

 ただTBSは「業務提携について協議を続けてきた中、事前連絡もなく短期間で大量に株式を取得され、唐突な印象」と反発気味。「株式市場の絡みもあり、事前に言うわけにはいかない」(国重副社長)と話すが、「他人の家に土足で踏み込んで提携を迫った」と批判も受けたライブドアと同じ図式では、という指摘もある。


このように、会見でTBS株取得の電撃作戦に対する批判をかわす国重副社長だが、今年の夏、ダイヤモンドザイZAI(2005年6月号)で、過去に個人投資家のために手口情報公開を訴えたことを回想したり、大量保有報告に抜け道があると指摘していたりしている。

ダイヤモンドザイZAI(2005年6月号)
特別対談 ネット証券界の2トップがアツク語る!


今こそ、マーケットの透明性を改めて問うべき

−ライブドアの1件で問題になった時間外取引など、日本の株式市場はまだ公平なルールが整備されていない気がします。

国重 確かに改めてマーケットの透明性を問い直すべきだと痛感する出来事が増えているように思えますね。

松井 かつて国重さんが先頭に立って指摘してきた手口情報の公開も、マーケットの透明性を高める上で重要なテーマでした。

国重 もう2年も前の話になりますね。当時、ネット証券は5割近くまで個人投資家のシェアを獲得して、かなり勢いづいていました。我々も皆さんの声を頼りに、プロの投資家だけが独占してきた手口情報を一般に公開すべきだと訴えたのですが・・・。

松井 我々の意に反して、東証は03年6月から手口情報を非公開にしました。案の定、我々が危惧していたとおり、マーケットの透明性は損なわれました。手口があからさまにならないのをいいことに、ある意味でやりたい放題のトレードが横行しています。

国重 株式の大量保有報告(5%ルール)にしても、抜け道が多すぎます。たとえば、信託受益権として保有すれば報告義務を免れますし、貸し株が該当するかどうかも曖昧です。

松井 おっしゃるとおり、どういった大株主がいずれの銘柄をどの程度保有しているのかという情報も、一般の投資家には非常に重要です。様々な情報をオープンにすることで、相場操縦などを牽制しなければなりません。さもなければ、最後は個人投資家がダメージを受けてしまいます。

−ライブドアの騒動に限らず、個人投資家はないがしろにされがちですね。

国重 つくづく、今まで個人投資家は不利な環境下での取引を強いられてきました。第1に情報が無かったのですが、ネット証券の台頭でリアルタイムの株価やニュースなどの配信が普及し、その点では機関投資家とあまり変わらない環境が整ってきたと言えそうです。しかし、さらに情報をオープンにしていかなければ、本当の意味でフェアなマーケットとはなりません

松井 (中略)しかし、現在は手口情報が公開されていないので、上場企業の経営者ですら、その事実をはっきりと知ることができない。我々ネット専業の証券会社にとっては、なんとも歯がゆい事態なのです。

国重 (中略)投資家人口はいっそう拡大しそうです。そうなると、個人投資家だけが不利にならないように、市場の透明性を高めるというインフラ整備が不可欠になってきます。


国重社長は、個人投資家のため市場の透明性を高めることを、DLJDirectSFG証券設立時から今年の夏まで主張してきたわけだが、今回のこっそりTBSの株式取得していた行為は、(抜け道は使ってないけど)主張に一貫性が無いとも受け止められかねない。今回の楽天に不満を思っているのはTBSの経営陣だけで、個人投資家はほとんど見てるだけとはいえ、国重社長や楽天証券が、手口情報の公開や、市場の透明性を再び主張するのであれば、まず今回のTBS株取得について、説明して個人投資家の理解を得ておいた方がいいだろう。それと、少なくとも楽天証券から投資銀行業務の部門を分離させて、リテール業務は独立して運営した方がいいと思うのだが。

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