楽天証券楽天証券が、ある意味予想通り、12月からの手数料値下げを再延期すると発表した。金融庁からの業務改善命令が影響したと思われる。楽天証券の史上最大の作戦は、年内に実施できるか微妙になってきた。


弊社社長より、国内株式新手数料導入の再延期について

平素は楽天証券をご愛顧いただき、心より御礼申し上げます。

 さて、すでにお知らせ申しあげましたとおり、弊社では、現在、システムの安定稼働に向け、計画的・段階的なシステム増強策を実施してきており、この11月26日には一連の増強策の中で最も重要なものとして位置付けている基幹データベースサーバのさらなる追加等を実施いたします。

 弊社では、システム増強策の実施により、お客様に快適かつ安定した取引環境を提供することが目下の最優先かつ最重要の課題と考えており、また、新たなシステム障害の発生を未然に防止するため、こうした施策の確実な実施のみならず、増強策の効果をも十分に見極める必要があると考えております。

 こうした観点から、実施時期を12月に延期させていただいた国内株式の新手数料につきまして、大変心苦しい限りでございますが、再度延期をさせていただきたくお知らせ申し上げます。新手数料を期待して新たに口座を開設いただいたお客様、新手数料を楽しみにお取引を継続いただいているお客様が多数いらっしゃることは十分に承知いたしており、お客様のお怒りも心中察して余りあるものがございます。このような措置を取らざるを得ないことは私どもの不肖と致すところであり、深くお詫び申し上げるとともに、何卒ご理解を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

 新手数料の導入につきましては、基幹データベースサーバの十分な容量確保と国内株式発注系システムの強化策を実施した後、それらの効果を確認したうえで、速やかに実施させていただく所存でございます。再度の延期になることに対するお詫びといたしまして、新手数料導入後に、新しい手数料コースである「ワンショットコース」においてポイントバック、あるいは期間を限定した割引措置など、お客様に何らかの誠意を示す必要があると考えており、現在具体的な方法を検討しております。実施時期とともに、決定いたしましたら、ご案内申し上げます。

 新手数料を発表しながら、二度にわたる延期措置を取らざるを得ないことは誠に不本意な決断であり、ネット証券を経営するものとして面目次第もございません。全力をあげてシステムの改善強化を進めておりますので、ご理解を賜りたく重ねてお願い申し上げます。

平成17年11月21日

楽天証券株式会社
代表取締役社長 國重 惇史


当初、楽天証券は10月からワンショット手数料導入を含む、手数料値下げを実施する予定だったが、8月〜9月のシステム障害多発によって値下げの実施を12月に遅らせている。

ところが楽天証券のトラブルはこれで収まらず、手数料値下げと同時に延期していた国内株取引への楽天証券ポイント還元を、テストが不十分のまま10月下旬に開始して、システム障害を発生させてしまった。これを問題視した金融庁が8月、9月のトラブルの再発防止が行われていないとして業務改善命令を出し、楽天証券は現在、システム増強等について報告を求められると同時に、責任の所在を明らかにするように迫れている。

今回の手数料値下げ再延期は、発表のとおりシステム増強完了までは手数料値下げによるリスクは背負えないということに加え、テスト不十分で失敗した楽天証券ポイント還元の二の舞になるわけにはいかないという意味がある。ライバルのイー・トレード証券が手数料体系を変えずに値下げを実施したのに対して、楽天証券はワンショット手数料導入のためのプログラム変更というハードルがある。取引急増によるレスポンス悪化だけではなく、プログラム変更による買付余力計算やバッチ処理に影響が無いことを十分確認する必要があると考えられる。

どうやら楽天証券が年内に手数料値下げを実施できるかどうかは微妙になってきた。年末年始に十分テストをして、1月中旬ごろから実施が現実的なスケジュールじゃないだろうか。

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