Gomez社の2006年3月オンライン証券ランキングが発表されました。総合1位はおそらく前回に続いて、イー・トレード証券で、2位にマネックス証券、3位がカブドットコム証券となっています。今回は、株式会社シーフォーテクノロジーの技術協力を受けて、個人情報保護への取組、フィッシング対策、サーバーのセキュリティ対策等の状況の調査結果も反映されているそうです。

Gomez: オンライン証券ランキング

このランキングは、 オンライン証券の総合評価だけでなく、カテゴリ別ランキングとして以下の5つと、

・サイトの使いやすさ
・金融商品とマーケット情報
・サイトの安定性と信頼感
・便利な機能・サービス
・総費用

顧客タイプ別ランキングの以下の3つ

短期売買型
情報分析・長期保有型
小口投資型

のランキングが発表されています。

総合1位のイー・トレード証券は、カテゴリ「ウェブサイトの使いやすさ」「金融商品とマーケット情報」、投資家タイプ別「短期売買型」「小口投資型」でそれぞれ1位です。全体を俯瞰すると、総費用以外の項目では、大手ネット証券と大和證券が上位を占め、総合ランキングでも大手ネット証券が上位になっています。これは、商品サービスやシステムの質の面では大手ネット証券がそれ以外を圧倒していて、中小の証券会社は株式の手数料を下げることでしか対抗できていないためかもしれませんね。

では、カテゴリ別ランキングを順に見ていきましょう。

サイトの使いやすさ」では、総合順位と同じで、イー・トレード、マネックス、カブドットコムの順で、ここまでが8点台、以下オリックス、松井、リテラ・クレア、楽天となっています。

金融商品とマーケット情報」もほとんど同じ感じで、イー・トレード、大和、マネックス、カブドットコム、ここまでが7点台、以下は、楽天、オリックス、松井、岩井の順で、リテラ・クレアはここでは12位まで下がります。この項目は比較的大手と中小のポイント差が大きいです。

サイトの安定性と信頼感」では、順位に変動が起きます。1位から松井、マネックス、カブドットコム、大和、ここまでが7点台、大和はシステム障害のニュースを聞いた覚えがあるのでわかりませんが、上位3社は比較的安定感があったと思います。続いて、イー・トレードはここでは5位に下がっています。少し重い時期もあったかもしれません。そして、業務改善命令で去年混乱した楽天証券は12位まで下がって6点台を割っています。ちなみに最下位はセンチュリー証券で、ここも業務改善命令を受けてますね。

便利な機能・サービス」も大手と中小の差が大きいカテゴリです。1位から順にマネックス、イー・トレード、カブドットコム、楽天、大和、松井でここまでが6点台、その下はガクッと下がって5点台のオリックス、リテラ・クレアといった感じです。夜間取引のあるマネックスなど独自のサービス・機能を用意できる大手ネット証券が上位になってます。

総費用」では、中小証券が順位を上げてきます。1位のそしあす証券は、なんと10点満点。しかし他のカテゴリでは最下位かブービーばかりで総合ブービー(23位)。つづいてセンチュリーが9.99点(ここは総合最下位)、そして手数料値下げ効果でイー・トレードが3位、以下、日本協栄、ジェット、内藤、プレミアムトレードパスのライブドア、史上最大の作戦(値下げ)が延期になっている楽天が8位、豊、エイチ・エス、東洋、ウツミ屋、丸八、岩井、14位までが9点台で高評価となっています。その一方手数料が比較的高い大手ネット証券では、カブドットコムが15位(8.88)、オリックスが16位(8.82)、マネックスが22位(7.60)、ハッスルレートの大和が23位(6.93)、手数料値下げ前の松井が最下位(6.70)で上位とは差が開いています。松井証券が手数料を値下げするのもこれだけ評価に差が出ていれば当然かもしれません。

この他、顧客タイプ別ランキングもありますが、これはほぼネット証券と大和が上位に並んでいる状況に変わりがありません。唯一「小口投資型」で松井証券が13位に低迷しています。10万円未満無料はやっていますが、それよりも1日売買代金300万円毎のボックスレートが小口投資家に不利になっていたことが影響していたようで、これも4月からの手数料改定で改善を期待したいところです。

全体を見た感想としては、「総費用」で9点台の証券会社が多くなっていることは、これまでの手数料値下げ競争の結果、大半の証券会社の顧客は手数料に満足していて、9点に満たない証券会社は戦略的に値下げしてシェアを取り戻す余地がありそうだということ。一方で、証券会社の総合的な評価の差は、手数料の差であることよりも、それ以外の商品サービスの量や質、システムの安定性・信頼感の方の差である場合が多いのではないのかということでしょうか。もちろん商品サービスのレベルで拮抗するネット証券大手の間では、まだ手数料の値下げが戦略的な重要性を持っているのだろうと思います。

それにしても、Gomezのランキング手法は、「ユーザー・アンケート調査などによりユーザーの生の声を吸い上げ、調査項目に落とし込みます。」とのことですが、ユーザの多い大手ネット証券はともかくとして、中小の証券会社ではある程度の数の母集団を集めることができているんでしょうかね。1人の意見で評価が大きく偏ってしまっていそうな気がします。

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