ついに業界最低水準になってしまいました。 このブログの更新頻度が。 試験運用期間中なので許してください。 久しぶりですが、7月28日に松井証券が来春から即時決済取引の夜間取引PTSをはじめるという発表をしているので、そのことについて書いてみます。
夜間取引の参入について 〜約定と受渡が同時の即時決済取引(日本初)を導入予定〜(松井証券) ● 市場取引で即時決済・受渡ができる点で画期的かも 個人投資家同士が株取引で取引成立後即決済・即受渡をしようとしたら、今のところ売り手と買い手が物理的に同じ場所に集い、売り手のタンス株券をニコニコ現金払いで買い手が買い取るしか方法はないでしょう。相対取引ですね。これがライブドア1株とか、多くても10万円、20万円の取引なら即時も可能かもしれませんが、金額が大きくなるとそういうわけにはいかなくなってきます。 少し前の西武鉄道の株保有比率虚偽記載問題で、西武の筆頭株主のコクドが1970年ごろ、西武鉄道株を買い占めようとした元ホテル・ニュージャパン社長の横井英樹氏と交渉し、相対取引で西武株を買い戻したことが明らかになったというニュースがありました。
 関係者によると、横井元社長は、西武鉄道株の総株数の数%分を取得した。その状況を知ったコクドの役員らが70年ごろ、横井元社長に買い戻しを申し入れ、数億円で売買が成立したという。  売買交渉は東京都内のプリンスホテル内で行われ、コクドの取締役と横井元社長、仲介者としての大物右翼など数人が出席した。横井元社長が株の代金を現金で支払うよう要望したため、テーブルの上にはコクド側が用意した数億円分の現金が置かれたという。交渉は長時間にわたった後、横井元社長が現金を一枚一枚数えるなどして確認をしたため、朝から始まった交渉は夕方までかかったとされる。
かなり異常な例(そもそも西武株自体にも問題があった)ですが、ここで、もしコクドの役員や横井氏が直接対面して右翼の横で現金や株券を一枚一枚数えて確認することをやりたくないなぁと思ったらどうするか。考えられるとしたら、買い手の支払能力、売り手の株券受渡し能力を同時に取引主体の双方に対して保障することができる存在(証券会社等)にあらかじめ株・現金を預けあっておいて、その後、その存在に取引を委託する方法があります。手元に資金・株券を引き出すのは後でもよく、とりあえず預けている状態でもよいのであれば、一つの証券会社の中で資産の保有者を付け替えるだけなので、一応即時取引は可能ですよね。委託される証券会社が一つであるということが鍵になるんですが、これが買い手と売り手が別々の証券会社に委託していたら、その間で決済・受渡しの手続きにいろいろ手間がかかってしまうので即時にはできなくなってしまうわけです。 実際、普通の証券会社は複数の顧客の複数の取引の面倒を見なければならないし、1日に取引相手となる証券会社は、1つではなく複数の場合がほとんど、と言うより当たり前になっています。ということで、この当たり前の現状のために、あるタイミングで清算機関(日本クリアリング機構)が証券会社毎に売買を相殺して決済保障し、その決済指示を受けた決済機関(証券保管振替機構・銀行)が形式上証券会社単位で、株券を振替えたり、資金をを振替えるというやり方が効率がいいだろうということで、日本の株取引のほとんどがその仕組みで決済が行われています。でもこのやり方だと決済は3日後(T+3)、なんとか縮める努力をしているようですが、それもで1日後(T+1)になってしまうそうです。複数のマーケット(ほとんど東証だけど)に、複数の証券会社を経由して、複数の顧客という図式だと、即時どころか当日もできなくなるというのが現状です。 (一応、イレギュラーな当日決済取引というものがありますが、当日または翌日決済で、前場の取引は後場に受渡し、後場の取引は翌朝受渡しなので即時ではないそうです。当日決済取引) そんな現状に対して、松井証券は1つのマーケットで顧客の面倒を見る委託証券会社を1社に限定してしまうということを考えついたわけです。 松井証券は、自社単独運営のマーケット(PTS)を作り、顧客の資産を預かる市場参加者(取引委託証券会社)を自社に限定することで、即時決済ルールの「一つの証券会社とその顧客たち」という世界を構築。取引所参加者(証券会社)間のT+3清算・決済スキームという既存の取引慣習の世界と同時に、それと接しながらも独立した即時決済の松井ワールドを打ちたてようとする、なんとも絶妙な戦略です。確かに特許を申請するだけのことはあります。 ● 個人投資家が即時決済のメリットを魅力に思うかどうか しかしながら、松井証券の即時決済夜間取引が画期的と言ったところで、即時決済が個人投資家にとって本当に大きなメリットがあるのか。投資家があまり重要に思わなければ別に松井証券の夜間取引サービスを選択する必要はないわけですが、現状ではまだインパクトのあるメリットは打ち出せていないと思います。 ------------------------------------------------------ [考えられるメリット] ・決済日までの期間リスクが無くなる ・売却即現金化で、すぐに出金やショッピングができる ・T+3なら差金決済だからできない取引ができるように ・もしかしたら配当・優待取りの最終日が後ろにずれるかも ------------------------------------------------------ 年度末とかに権利落ち日に売った株を翌営業日に買ったらその日に売れないと言う書き込みが掲示板とかにありますよね。株取引初心者には確かにわかりずらいルールなので、これが回避できるのはいいことかもしれません。しかし、そういうケースに出くわすのは年に数回だし、知ってて注意してれば回避できるので、即時決済のメリットとしてはそんなに大きくはないかもしれません。回転売買がし放題というのはとてもいいんですが。 出金やショッピングの件については、銀行と提携して即時出金できるようにしたりとか、ネットショッピング業者と提携して売却で得たキャッシュですぐに買い物ができるようになるかもしれません。今後の展開に注目したいと思います。 ● 権利付落ち日から権利確定日までに松井のPTSで株を買った場合、配当・優待はもらえるのか? もらえるかもしれない。 (証券会社の社員でも、証券外務員の資格も持っていない私が予想してみただけなので保障できませんが) ■2007年3月末決算銘柄の場合 ------------------------ 26日 通常の権利付最終日 27日 通常の権利落ち日  ★この間に他の松井の客が26日以前に買った決算銘柄の株を夜間PTSで購入すれば大丈夫かもしれない 30日 権利確定日 →証券会社がこの日時点の決算銘柄の保有株主氏名・株数を保管振替機構にまとめて報告。 ------------------------ 理論価格としては取引所の市場価格に配当(優待)分のプレミアを上乗せした価格になるかもしれません。 しかし、流動性のない銘柄だと、プレミア分を考慮しない権利落ち価格で売ってしまったり、安い値段で買い注文を入れて待ち伏せするということも起こるかも。 ● 一般の取引所で購入した株は決済が終わらないと売れない? T+3のスキームの株の場合は、そうなってしまうかもしれません。即時決済市場と同時にT+3の市場を併設するか、あるいは貸し株を借りるとかしないと、一般の取引所で買った株をすぐ売るということができないかもしれないです。これは使い勝手を低下する要因になるかもしれません。 ● 東証との提携 イー・トレード証券と楽天証券の連合PTSが、去年の東証のシステム障害を批判して、対抗勢力としてのPTSを目指そうとしていて、カブドットコム証券は東証と協調姿勢を見せていますが、松井証券は東証にコンプライアンスで協力を得ると言っています。あくまで東証が夜間取引をすべきだという主張は崩さず、東証がやるなら自分は止めると松井道夫社長は言っているようです。やはり、去年の取引所の障害とか世界の取引所再編の動きが影響して、東証とネット証券の関係も変わってきたのかもしれませんね。今後の合従連衡も見ものです。東証の協力を得てコンプライアンスを強化するというのはいいことだと思います。 ● で、どこのPTSが勝つの? 仮に、一斉によーいドンで夜間取引のPTSが開始されたら、連合PTSが流動性で有利でしょう。でも、いつできるか不明だし、楽天とSBIイー・トレードの足並みが揃うのかどうかという不安定要素があります。そして、システム面で言うと、スタートからいきなり、合計200万口座級の取引を始めて大丈夫なのかという心配もあります。心配だからと言って、どちらかの証券会社だけ先にはじめるというのはないでしょう。ということでスタート期については、カブドットコム証券のKabu.comPTSと松井証券の即時決済PTSは、単独でやることになるので安定性では分があります。あくまでスタートから数ヶ月間での安定性の優位ですが。 結局のところ開始時期も違うし、やってみないとわからないということになりますが、わりと多くの投資家が望んでいたかもしれないネット証券各社合同のPTSではなく、当面はPTS同士の競争の時代が2,3年は続くのではないでしょうか。 とりあえず、どこのも早く始まって欲しいですね。