なぜ土曜日に発表されたのかは不明だが20日、松井証券は今年春に向けて準備を進めていた、即時決済取引が可能なPTS(私設取引システム)の計画を見直したことを発表した。価格決定方式は一般的な「オークション方式」から「ミラー方式」に変更され、取引時間は夜間ではなく日中の取引所と同じ時間帯となった。見直しに伴い、PTSの開設は夏に延期となっている。
PTS開設による即時決済取引の取扱いの見直しについて(PDF) 〜「ミラー方式」(日本初)で日中に取引、高い資金効率での取引が可能〜 松井証券は、平成18年7月28日に発表いたしましたPTS(私設取引システム)*1開設による即時決済取引*2の取扱いにつきまして、見直しを行いましたことをお知らせいたします。これに伴いまして、取引開始予定は今夏に変更となります。 1. 価格決定の方法は「ミラー方式」(日本初) 価格決定の方法を、オークションからクロッシング(市場価格売買方式)に変更いたします。具体的には、取引所の時価で買いと売りの注文を随時に成立させる、当社独自の「ミラー方式」となります。PTSにおいて本方式を導入するのは日本初の試みです。 「ミラー方式」は価格形成機能を持たないため、流動性の低いオークションにおいて憂慮される、相場操縦などの作為的な相場形成の問題は生じません。つまり、オークションのPTSを運営するにあたり、最大のネックであった不公正取引の問題は「ミラー方式」では大幅に低減されます。 2. 取引時間は日中 取引時間を、夜間から日中(取引所の立会時間に準ずる)に変更いたします。即時決済取引の利点は「即時に現金化できること」であり、お客様の資金ニーズは日中の方がはるかに大きいこと、売買停止措置を取引所に準じて行えること、コールセンターの効率的な運営が可能なことなどを勘案し、取引時間を日中といたしました。 3. 即時決済取引により高い資金効率での取引が可能となり、流動性を確保 即時決済取引とは、取引所の普通取引で3日間のタイムラグがあった約定と受渡が同時に行われる取引です。即時決済取引により投資家が株式の売却を行った場合、売却代金は即時に受け渡されることから使途の制約を受けないため、例えば日計り取引*3の売却代金を同日中に同一銘柄の買付代金に充てることも可能です。 つまり、即時決済取引を利用すれば、従来に比べてはるかに高い資金効率での取引が可能となり、結果として、アクティブに取引を行うお客様に従来以上の利便性を提供すると同時に、PTSの流動性を高めることができます。仮に、回転売買が加熱した場合も、「ミラー方式」を採用するため、信頼性の高い価格での取引が実現されます。 松井証券は、今後も個人投資家の利益に資するサービスの拡充に努めてまいります。 以上 *1 本スキームは、内閣総理大臣より「証券会社の私設取引システム運営業務の認可」を受けた上で実施いたします。 *2 松井証券では、即時決済システム及び「ミラー方式」による価格決定方法に関する特許を出願中です。 *3 同日に同一銘柄の「買付(売却)→売却(買付)」を行う取引。取引所の普通取引の場合、日計り取引の売却代金を同日中に同一銘柄の買付代金に充てることは差金決済に該当いたします。差金決済は、法令により禁止されています。前回の即時決済PTS発表の時は、確かに革新的だが、そんなにニーズがあることだろうかという疑問もあったが、今回の見直しの内容、つまり日中ミラー方式PTSは、ネット証券Blogとしてはとりあえず評価したいと思う。 松井証券がPTSの計画を見直したのは、最大の特徴である即時決済方式の優位性を高めるためだろう。仮に見直し前の夜間PTSを開設したとしたら、夜間では他のPTS(オークション方式や終値一本値)のPTSとの流動性の競争になる。「流動性の競争」=「規模の競争」である。即時決済の仕組みは魅力的だが、この仕組みでは複数の証券会社と共同でPTSを運営して規模を拡大することは難しいと思われる。夜間取引では流動性の方が特に重要視されてしまうため、即時決済の魅力は生かせないというわけだ。松井証券は規模の競争を避け、即時決済を生かしたビジネスモデルの競争に活路を見出したのだろう。 昼間になれば、PTSで取引できる銘柄は即時決済で高い換金性を享受することができ、できない銘柄でも取引所で普通に売買ができるようになる。取引所取引の流動性の担保を得ながら、取引所に勝る換金性の即時決済を武器にしようという戦略だ。この方が即時決済の魅力は引き立つ。夜間取引の実現は松井証券自身ではできなくなり、取引所頼みになってしまったのは残念だが、同一銘柄でループトレードが可能になり、即時に換金も可能になり、ひょっとしたら取引所を経由しない分、手数料が安くなるかもしれないというメリットがあるのはおいしい。 あとは、 ・注文の時に、PTS取引と取引所取引の別を選択しないで、自動で有利な方で約定できる注文機能があるか (価格優先の原則、約定時間優先の原則、決済時間優先の原則の順で、できればでいいから即時決済取引で取引したいというような注文ができるか) ・権利落ち銘柄を取引所と同じ値段でPTSで購入できて、権利を取得できてしまうのか という疑問がクリアできればいい。 開設時期が夏に延期になってしまったのは残念だが、実現可能なら、おそらく今年期待のサービスの一つになるだろう。
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