12月末の日経ビジネスによる報道に続き、また三菱UFJフィナンシャルグループと松井証券が資本提携するとのニュースがあった。両社とも決定した事実はないという発表をしているが、今度は確度が高そうな報道に見える。
三菱UFJ、松井に出資検討 ネット証券強化狙う (産経新聞)  三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が、インターネット専業証券大手の松井証券へ出資を検討していることが23日、分かった。出資比率は、松井証券の発行済み株式の15%程度とする方向で調整している。個人投資家に人気のネット証券との連携で証券戦略の再構築を急ぐ三菱UFJと、メガバンクのブランド力で経営基盤を強化したい松井証券の思惑が一致した。  三菱UFJFGは傘下に、法人向け業務に強い三菱UFJ証券を抱えるほか、オンラインでの株式取引が主流となっている個人向け業務(リテール)を強化するため、ネット証券大手のカブドットコム証券にも約30%出資している。  だが、カブドットコム証券の昨年末の口座数は約54万。最大手のSBIイー・トレード証券の135万に大きく引き離され、ネット証券戦略の強化が課題となっていた。  三菱UFJFGは松井証券への出資に加え、カブドットコム証券への出資拡大も検討している。  一方、松井証券は、手数料引き下げ競争などへの対応が遅れ、昨年9月中間期決算では、ネット証券大手5社中、唯一の減収減益だった。↓ 証券業界では、みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ証券と新光証券が合併を決めるなど、銀行主導の再編が足元で加速している。
前回の日経ビジネスの報道では、三菱UFJは子会社のカブドットコム証券が独自路線を進んでしまってグループ戦略がとれないために、松井証券に触手を伸ばしたというような内容になっていたが、今回は、カブドットコム証券にも出資拡大をし、3社で個人向けビジネスを強化するという内容になっている。検討されているという出資比率(三菱UFJ→松井証券15%、三菱UFJ→カブドットコム40%)から考えて、松井証券とカブドットコム証券の合併という話にはなっていないだろう。 提携の内容を予想するとこのような内容ではないだろうか? ◎三菱UFJFGが松井証券に出資15%(第3社割当または松井家の株式の一部を取得) ○三菱UFJ証券が主幹事のIPOを松井証券に販売委託 ○三菱UFJ銀行店舗での松井証券の口座開設仲介業務(いわゆるりそな方式) △三菱UFJが松井証券での投資信託の取扱い開始を支援(取締役の派遣等) △夜一に三菱UFJ証券が参加 △三菱UFJダイレクトでのネット証券仲介業 △UFJカード提携による松井用クレジットカード発行 △三菱東京UFJ銀行振込用松井証券支店開設 △三菱UFJ証券リサーチレポート、三菱経済研究所レポートの松井証券への配信 ?Kabu.comPTSへの松井証券の参加 ?三菱UFJ・KDDIのモバイルネット銀行との何かの提携 掲示板や週刊誌などでは、松井道夫社長が勇退し夏の参議院選挙に出馬するという噂もあったが、それは無いような気がする。 銀行や証券会社の再編で最近キーワードになっているのが今年夏に施行される「金融商品取引法」だ。証券業者は、金融商品取引業者に分類されるようになる。三菱UFJとしては、証券部隊となる三菱UFJ証券では競争力・利益率が足りないとみて、松井証券、カブドットコム証券との提携・提携強化を望んでいると思われる。松井証券の方は、2006年中ごろから口座数の伸びが小さくなり、団塊世代の参入効果で期待していた預り資産の拡大に苦戦している。金融業界の中でもROEが比較的高いネット証券業界で、成長を維持するためには貯蓄から投資への流れに沿って銀行と提携することも必要だろう。そうした思惑が一致して、両社が提携することになったという可能性は十分ありそうだ。