松本大[ ネット証券Blog ] 
DIAMOND ONLINEに、マネックスグループ会長の松本大氏のインタビュー記事が掲載されていました。インタビューで、松本会長は、ネット証券各社が行った夜間取引に関する顧客向けのアンケートは東証の要望で実施したものだったことを明かしています。


■2014/01/08 マネックスグループ会長 松本 大 個人だけでは成立しない 夜間取引には機関投資家を(DIAMOND ONLINE)
──東京証券取引所が夜間取引の実施を検討しており、ネット証券各社の顧客向けアンケートでは、8割前後が「利用したい」と回答しました。

 まず、アンケートは東証の要望で実施したのであって、ネット証券業界として夜間取引の実現を要望したわけではありません。アジアでの地位向上という東証の狙いはわかりますが、いざ実施しても、機関投資家を巻き込まないで、ネット証券の個人投資家の取引だけで適正な価格形成ができるかどうか不安です。

松本大会長の発言で確認すべき点は以下の2点です。
  1. アンケートが東証の要望であったこと
  2. ネット証券業界として夜間取引の実現を要望したわけではないこと


1 アンケートが東証の要望であったこと

2013年11月11日の産経ニュースでは、東証が証券会社などの関係者から意見聴取を始めたと報じています。

■2013/11/11 東証が夜間市場の開設を検討 ニーズ次第で2015年にも(産経ニュース)
東京証券取引所が夜間取引市場の開設について検討に入り、証券会社などの関係者から意見聴取を始めたことが11日わかった。

ネット証券業界では、松井証券、楽天証券、マネックス証券、GMOクリック証券の少なくとも4社が顧客向けに夜間取引のアンケートを実施したことが確認されています。

これらのアンケートが直接的に東証からの要望で行われたのかはわかりませんが、意見聴取の回答方法として、一部の証券会社が独自に顧客アンケートという方法を取った可能性が高そうです。

なお、SBI証券については、ジャパンネクストPTSが東証と競合することもありアンケートを取らなかったことが考えられます。

カブドットコム証券については、既に2010年にアンケートを実施していることや、2011年にPTSサービスを終了した過去があるため、顧客向けアンケートを実施するのを控えたのかもしれません。


2 ネット証券業界として夜間取引の実現を要望したわけではないこと

アンケートを取った証券会社の中で、松井証券は東証に要望書を提出するという最も積極的な動きを見せました。また、11月10日の日経新聞では、アンケート開始前から要望書を提出することが報じられていました。

■2013/11/10 東証、夜間市場の創設検討 午後7時〜11時半有力 (日本経済新聞)
東証は証券各社に参加を強制せずにそれぞれの意思に任せる考えで、すでに証券各社に計画の概要についての説明を始めた。ネット専業証券は夜間取引に伴うコスト負担が小さく、おおむね開設に賛成の立場。松井証券は近く夜間市場の開設要望書を東証に提出する。

テレビ東京でも夜間取引の要望書を提出したことが映像ニュースとして報じられていましたので、11月10日の時点で東証や松井証券からマスコミ(日経)に対して、アンケート実施や要望書提出について話(情報)がいっていたようです。

その後、大和証券の社長が否定的な意見を述べると、ネット証券が賛成、対面証券が反対という報道がされるようになってきます。

■2013/12/18 東証「夜間取引」に渦巻く賛否…大手証券×ネット証券 焦点は取引量(産経ニュース)
東京証券取引所が開設を検討している夜間取引市場をめぐり、証券会社間の考え方の違いが鮮明になっている。ネット証券大手の松井証券が開設を求める要望書を東証に提出する一方で、店舗を持つ対面型の大手、大和証券グループ本社の日比野隆司社長は否定的な見解を示す。

このような報道によって、ネット証券業界は夜間取引に賛成だという印象が広まりました。

マネックスの松本会長は、これに待ったを掛けたかったのだと思われます。

マネックス証券でもアンケートを実施しており、結果は発表していませんが、賛成が多数だったと思われます。しかし、松本大会長は、夜間取引の参加者が個人投資家ばかりでは、価格発見機能が不十分で顧客に不利益になる恐れが有るため、機関投資家の参加を促すために慎重に進めるべきだという意見を持っています。

このように報道では、ネット証券業界全体が夜間取引に積極的のように見られましたが、マネックス証券のように業界内にも慎重な意見もありますので、報道にあるような「2015年にも実施」というのは簡単にできることではないでしょう。