個人的には、ライブドアも松井証券も、どっちも好きです。(とくに経営者)
両方の株を現物で保有してもいます。どっちも好きだからと言って今回のことで、困ったという気もしてません。

「わけのわからない分割」を"した方"・"非難した方"は両社とも自社の顧客を重視するという立場があっての言動なのです。
松井証券にとって「わけのわからない分割」をしたライブドアの意図は、みなさんすでにお分かりだと思います。

1.小中学生でも購入できるようにして、投資家層を広める
2.株主数を増やして、ポータルサイトの会員数を増やす。(ヤフーに株主数で勝った)
3.時価総額を1時的に急増させて、M&Aの株式交換比率を有利にする(ターボリナックスの買収)
4.話題を作り知名度アップ
「インボイスが21分割を発表し、負けたくなかった。歴史に残ることをやりたかった」(熊谷執行役員副社長)
5.子株の流通が遅いためにおきる弊害が、株式市場の制度・システム面の問題であることをアピールし、なお古い体質の証券界に一石を投じる(プロ野球参入に似ている)

で松井証券などのネット証券はどう思ったのでしょうか。
1〜4には、文句はないはずです。むしろ投資化家層の拡大は有難い話です。
2004年2月の松井・DLJ・カブドットコム3社のセミナーで松井社長は、「株の最低売買金額が高すぎる。大手中小の証券会社自身の株も未だに1000株単位のところがある。口だけでなく自腹を切ってやってみろって言いたい。松井は100株単位にしている。」と言ったぐらいで、投資額を下げるための株式分割も含めてこれには賛成の立場でした。

しかし、5が問題でした。昨年、日経ビジネス2003.10.6号特集「売りかつ会社は「ま行」で作れ」によると、松井証券は、資生堂のお客様センターの顧客の声を加工しないまま蓄積できる仕組みを参考にした、業務システム作り上げたそうです。これにより顧客の要望や不満を吸い上げ、「無期限信用取引」や「権利入札」などの新商品を開発できました。松井証券には顧客の不満もストレートにくるということです。当然ライブドアの分割で顧客の投資家が混乱したことも重要視しているはずです。それで損をした人は自己責任だと言われてしまいます。講演の中の自己責任に対する「危惧」とはこれに対してのことだと思います。商売をやっている以上、自分の顧客の不満は無視できません。時間がかかっても解決に向けて動くべきです。

この問題は、ネット証券にとっても、株券無券面化などによって解決しなければならない問題だと認識してます。この点、目指す方向ではライブドアと同じ意見。

しかし評議会も制度の改正を強く推進するものの、すぐには無理、それまでは、古いシステムによる混乱を緩和して顧客を守るために、値動きが激しい銘柄は、注意を喚起することにしたわけです。

で、ライブドアの分割はそれに値するぐらいの銘柄だったんですが、明らかに知っててやった意図的なものだった。しかもその会社が個人投資家相手のネット証券業に参入する。ライブドア証券をネット証券評議会は受け入れるでしょうか?そのままでは受け入れられませんよね。『今後、同じような分割をして投資家を混乱をさせた時は、ネット取引の半数をカバーしているネット証券評議会の注意喚起銘柄になりますよ。そうなったらライブドア株はどうなるか知りませんよ』というメッセージなのではないでしょうか。

ライブドアは、意図的に混乱を生じさせて古いシステムを批判しようとした。
ネット証券は、古いシステムを取り除くことに努力しつつも、顧客である投資家を混乱させるような手段には異議を唱えた。
方法論の対立なのです。