[ ネット証券Blog ]
東京証券取引所が、「現物市場の取引時間拡大(いわゆる夜間取引実施)に向けた研究会の設置について」というお知らせで、研究会の【検討事項】や【開催日程】、19名の【委員名簿】を公表しました。今回はその委員とその構成について少し書きたいと思います。
■ 東京証券取引所 お知らせ
現物市場の取引時間拡大に向けた研究会の設置について(PDF)
委員の所属の内訳は以下のとおり。
19名のうち、過半数を超える12名が証券会社のトップまたは役員で、さらに内訳を見ると、大手証券、中堅証券、外資系証券、ネット証券から3名ずつとなっており、バランスをとるように配慮がされているようです。
ネット証券
ネット証券からは、PTSではなく東証による夜間取引導入を主張し続けていた松井証券の松井道夫社長が、初めて議論の場に直接参加。同社は12月に「夜間市場を開設するように求める要望書」を提出しています。ただし、その根拠となっている個人投資家向けアンケートが東証からの要望だったというマネックス松本大社長のコメントがあったため、東証のステマ活動だったのではないかという意見もあります。そうだとすると松井証券もこれに一枚噛んでいる可能性が考えられますね。
マネックス証券の松本大社長は最近のインタビューで、「ネット証券業界として夜間取引の実現を要望したわけではありません。」と発言しています。夜間取引は機関投資家の参加を促すために慎重に進めるべきと考える慎重派です。なお、同社は夜間取引PTS「マネックスナイター」を運営していた実績があります。
余談になりますが、松井道夫氏と松本大氏というネット証券業界のビッグ2が同じ会議に参加するのも初めてのことかもしれません。松井氏が会長を務めていた(今は亡き)ネット証券評議会には、マネックス証券は参加せず、松井氏は「ジョインベスト証券やマネックス証券も東証の夜間取引導入に賛成するのであれば、ネット証券評議会に参加してもよい」と発言していました。
カブドットコム証券の齋藤正勝社長も委員に専任されています。齋藤氏は1月24日の決算会見で「ネット証券では総論として反対する人はいない印象だ。やるためにはどうしたらいいだろうと、前向きな議論になるだろう」と発言。同社はPTSによる夜間取引から撤退した経緯があるため夜間取引導入を主張しにくい面もありますが、基本的には賛成の立場のようです。
一方、個人委託売買代金シェア1位のSBI証券、2位の楽天証券からは委員が専任されませんでした。SBI証券はPTSで夜間取引サービスを提供しているため東証とは競合関係にあります。楽天証券は個人投資家向けアンケートを実施し、その結果を公表しているので賛成の立場と見られますが、委員は出してません。GMOクリック証券もアンケートを実施していますが同じく委員は出ず。夜間取引の賛否はどうであれ、業界活動に力をいれるかどうかは会社によってまちまちということなのでしょう。
大手証券
野村・大和・日興の大手3社が揃い踏みになりましたが、こちらはトップではなく役員が選任。大和証券グループ本社の日比野隆司社長が「切迫したニーズも必然性もない。慎重に検討してほしい」と否定的な発言をしているように、反対の立場と考えられています。なお、大和証券は「ダイワPTS」という夜間取引サービスを運営していたことがあります。
中堅証券
中堅証券からは立花証券、エース証券、丸三証券が参加。
立花証券はe支店に加えてリテラ・クレア証券からオンライントレード事業を買収し、ネットにも力を入れていますが、石井登社長の実父の石井久氏(元社長)は、「あまり感心しません。深夜に取引をやれば、証券会社は従業員に残業代を出さなければいけない。やりたい証券会社とやりたくない証券会社があるでしょう。労働時間が長すぎるのは良くありません。今は証券界はもうけていますが、マイナスも計算したほうが良いのではないでしょうか」と従業員の負担を理由に否定的な発言をしています。長男の登氏も同意見なのか違うのか気になります。
エース証券、丸三証券もオンライントレードをやっているものの、対面取引もありますので夜間取引に反対する可能性があります。なお、丸三証券はマネックスナイターに参加していたことがありますね。
その他、学識経験者など
その他の市場参加者の動向については詳しくないので書けません。3名の学識経験者は中立的な立場で意見をする可能性や、東証にとっての国際競争の観点で夜間取引の必要性について意見する可能性が考えられます。なお、座長である大和総研の川村雄介氏は長崎大学や一橋大学で教授を務めていたことがあるため、実質的には学識経験者と考えていいでしょう。
とりあえずは1回目の研究会でどんな議論が出るのか注目したいと思います。4回で議論が尽くされるかは不明ですが、あくまで研究会。結局は東証(日本取引所グループ)が判断する問題ですが、すんなり行くでしょうか。
東京証券取引所が、「現物市場の取引時間拡大(いわゆる夜間取引実施)に向けた研究会の設置について」というお知らせで、研究会の【検討事項】や【開催日程】、19名の【委員名簿】を公表しました。今回はその委員とその構成について少し書きたいと思います。
■ 東京証券取引所 お知らせ
現物市場の取引時間拡大に向けた研究会の設置について(PDF)
【検討事項】
2014年2月初旬に初回の研究会を開催し、同年春までの間に4回程度の開催を予定 |
委員の所属の内訳は以下のとおり。
証券会社 | 12名 | 大手証券 | 3名 | 計19名 |
中堅証券 | 3名 | |||
外資系証券 | 3名 | |||
ネット証券 | 3名 | |||
投資信託会社 | 1名 | |||
信託銀行 | 1名 | |||
商社 | 1名 | |||
シンクタンク | 1名 | |||
学識経験者 | 3名 |
19名のうち、過半数を超える12名が証券会社のトップまたは役員で、さらに内訳を見ると、大手証券、中堅証券、外資系証券、ネット証券から3名ずつとなっており、バランスをとるように配慮がされているようです。
ネット証券
ネット証券からは、PTSではなく東証による夜間取引導入を主張し続けていた松井証券の松井道夫社長が、初めて議論の場に直接参加。同社は12月に「夜間市場を開設するように求める要望書」を提出しています。ただし、その根拠となっている個人投資家向けアンケートが東証からの要望だったというマネックス松本大社長のコメントがあったため、東証のステマ活動だったのではないかという意見もあります。そうだとすると松井証券もこれに一枚噛んでいる可能性が考えられますね。
マネックス証券の松本大社長は最近のインタビューで、「ネット証券業界として夜間取引の実現を要望したわけではありません。」と発言しています。夜間取引は機関投資家の参加を促すために慎重に進めるべきと考える慎重派です。なお、同社は夜間取引PTS「マネックスナイター」を運営していた実績があります。
余談になりますが、松井道夫氏と松本大氏というネット証券業界のビッグ2が同じ会議に参加するのも初めてのことかもしれません。松井氏が会長を務めていた(今は亡き)ネット証券評議会には、マネックス証券は参加せず、松井氏は「ジョインベスト証券やマネックス証券も東証の夜間取引導入に賛成するのであれば、ネット証券評議会に参加してもよい」と発言していました。
カブドットコム証券の齋藤正勝社長も委員に専任されています。齋藤氏は1月24日の決算会見で「ネット証券では総論として反対する人はいない印象だ。やるためにはどうしたらいいだろうと、前向きな議論になるだろう」と発言。同社はPTSによる夜間取引から撤退した経緯があるため夜間取引導入を主張しにくい面もありますが、基本的には賛成の立場のようです。
一方、個人委託売買代金シェア1位のSBI証券、2位の楽天証券からは委員が専任されませんでした。SBI証券はPTSで夜間取引サービスを提供しているため東証とは競合関係にあります。楽天証券は個人投資家向けアンケートを実施し、その結果を公表しているので賛成の立場と見られますが、委員は出してません。GMOクリック証券もアンケートを実施していますが同じく委員は出ず。夜間取引の賛否はどうであれ、業界活動に力をいれるかどうかは会社によってまちまちということなのでしょう。
大手証券
野村・大和・日興の大手3社が揃い踏みになりましたが、こちらはトップではなく役員が選任。大和証券グループ本社の日比野隆司社長が「切迫したニーズも必然性もない。慎重に検討してほしい」と否定的な発言をしているように、反対の立場と考えられています。なお、大和証券は「ダイワPTS」という夜間取引サービスを運営していたことがあります。
中堅証券
中堅証券からは立花証券、エース証券、丸三証券が参加。
立花証券はe支店に加えてリテラ・クレア証券からオンライントレード事業を買収し、ネットにも力を入れていますが、石井登社長の実父の石井久氏(元社長)は、「あまり感心しません。深夜に取引をやれば、証券会社は従業員に残業代を出さなければいけない。やりたい証券会社とやりたくない証券会社があるでしょう。労働時間が長すぎるのは良くありません。今は証券界はもうけていますが、マイナスも計算したほうが良いのではないでしょうか」と従業員の負担を理由に否定的な発言をしています。長男の登氏も同意見なのか違うのか気になります。
エース証券、丸三証券もオンライントレードをやっているものの、対面取引もありますので夜間取引に反対する可能性があります。なお、丸三証券はマネックスナイターに参加していたことがありますね。
その他、学識経験者など
その他の市場参加者の動向については詳しくないので書けません。3名の学識経験者は中立的な立場で意見をする可能性や、東証にとっての国際競争の観点で夜間取引の必要性について意見する可能性が考えられます。なお、座長である大和総研の川村雄介氏は長崎大学や一橋大学で教授を務めていたことがあるため、実質的には学識経験者と考えていいでしょう。
とりあえずは1回目の研究会でどんな議論が出るのか注目したいと思います。4回で議論が尽くされるかは不明ですが、あくまで研究会。結局は東証(日本取引所グループ)が判断する問題ですが、すんなり行くでしょうか。
氏名(敬称略) | 所属 |
---|---|
川村雄介 ※座長 | (株)大和総研 副理事長 |
池尾和人 | 慶應義塾大学経済学部 教授 |
石井登 | 立花証券(株) 代表取締役社長 |
乾裕 | エース証券(株) 代表取締役社長 |
宇野淳 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科 教授 |
大森進 | UBS証券(株) 代表取締役社長 |
岡田譲治 | 三井物産(株) 代表取締役専務執行役員CFO |
川本裕子 | 早稲田大学大学院ファイナンス研究科 教授 |
小祝寿彦 | 丸三証券(株) 取締役常務執行役員 |
児玉哲哉 | バークレイズ証券(株) 副会長 |
齋藤正勝 | カブドットコム証券(株) 取締役代表執行役社長 |
ショーン・ローレンス | エービーエヌ・アムロ・クリアリング証券(株) 代表取締役 |
對間久文 | SMBC日興証券(株) 常務執行役員 |
寺口智之 | 野村證券(株) 執行役員 |
夏目景輔 | 大和証券(株) 執行役員 |
成川順一 | 三菱UFJ信託銀行(株) 常務執行役員 |
松井道夫 | 松井証券(株) 代表取締役社長 |
齋藤正勝 | カブドットコム証券(株) 取締役代表執行役社長 |
松本大 | マネックス証券(株) 代表取締役社長CEO |
村上雅彦 | 日興アセットマネジメント(株) 代表取締役副社長 |